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日記から何から

ゴルゴ13が好き

はてなブログ10周年特別お題「私が◯◯にハマる10の理由

ゴルゴ13
連載中
アクション劇画 / 1968年11月~連載中

作品紹介
国籍・年齢・本名すべてが不明の超A級スナイパー!
1968年11月(1969年1月号)から雑誌に連載開始。以来一度も休載せず、現在も「ビッグコミック小学館)」にて好評連載中。

作品一覧 | さいとう・プロダクション

 ゴルゴ13が好きで、単行本を順番に買いつつ読み、この間202巻を読み終えて追いついた。買い始めたのは(Twitterを見る限り)多分2020/6あたりなので、1年半くらいかかっている。

 多分初めて見かけたのは床屋とかそういう待ち時間のあるところの本棚で、コンビニに売っていることに気付き、大学に入ったあたりからたまに買っては読み、ということをしていた。全部読みたい気持ちはありつつ、ものすごい量があることは神保町の三省堂で全巻入った本棚を見て知っていたので、思い切るには時間がかかった。

 ゴルゴ13が好きです、読んでいます、と話すと、どこが良いのか?とよく聞かれるけど、あんまりちゃんと答えられたことがない。多分こうかな〜〜と思いながら10の理由を挙げてみるけど、ゴルゴ13について何か書くの自体が無粋、という気持ちもあるので、独り言です。

理由

勧善懲悪(?)

 素朴には、勧善懲悪っぽいお話で胸がすくというのがあるかも。作中は、基本的には現実に近い世界観なので、善悪というはっきりしたものはなく、ゴルゴ13も犯罪者*1なので、善とは言い切れない。とはいえ、ある程度、(いわゆる)良い人が救われて(いわゆる)悪い人が憂き目に遭うというお話が存在する。なべて見ると、それが勧善懲悪っぽくなっているように思えて、現実もこう上手くいってほしいものだぜ、みたいな良い気持ちになれるのでは、と思っている。

基準がぶれない

 ゴルゴ13自身の中に一定の"ルール"があるらしく*2、依頼を受ける/受けない、敵視する/しない、殺す/殺さないなどがそれに基づいて決められているらしい。気分屋みたいなことはなく、常に考えた結果そうなっているというところが、読んでいて性に合うのかも。ルールに沿っていないように見える場面もごくたまにあるのだけど、何か別のルールに沿っているのか、意外と例外を許しているのか、みたいに考えられるのも面白い(本当に何か意味があるかは不明なので、考えすぎないようにはしている)。

人間である

 本の帯やうたい文句、作中のゴルゴ13についての修飾など、いたるところで"機械"とか"人間ではない"とか"神のごとき"とか書かれているのだけど、読者として全部見ていると、人間なんだな、と思う場面がとても多い。
 人を殺めるというのはもちろん大変なことで、それをどんどんこなしていくことは異常なことではある。ただ、感情の機微や行動の予測などは人間として他の人間を理解することでできる技だし、何より感情を持っていることがわかる場面が意外とある(表情も色々ある)。特に驚いた場面は多く、予期しきれなかったことに対して必死に対応したり*3依頼人の意外な発言に注目したり(これは依頼人の事情が特殊なことが多いので結構よくある)と、読んでいて微笑ましくなる。それでも、上に書いた通りルールは曲げないということもあり、非情に見える行動を取ることも多いので、読んでいて寂しい気持ちになることもある。これの何が良いのかを言い表しづらいけど、頑張ってくれていて元気をもらうとか、応援したいような気持ちになるのだと思う。勝手に。
 大事な情報として、犬が死ぬ話*4はいくつかあることは書いておくけど、ゴルゴ13の犬への情は厚く、比較的わかりやすい気がするので、感情を垣間見たい人にはおすすめ。

強い

 強い。読んでいて急に死ぬようなことはない、という安心感がある。爽快感というのもあるけど、どう窮地を切り抜けるのかなどを期待しながら(必要以上に心配せずに)読むことができる。連載なのだから、ということもあるけど、文武いずれも強く、知識と計算に基づく行動に戦闘力を纏って力強く活動している姿は、とても信頼できる。

 強運の持ち主であることも、読んでいて楽しい点だと思う。困難を極める依頼の中、命を落とさずに仕事を続けられるのは、博識であり肉体的に頑丈で武芸に長けているだけでは難しく、場面場面で運があるという要素も少なからずある(強運という意味では強いにも通じる)。作中でもゴルゴ13本人がそう認識していて、プロとしての条件を尋ねられたときには10%/20%/30%/40%の順で才能/努力/臆病さ/運と答えていたりする*5
 これは読んでいる側からすると、なんでも大丈夫なように見えて実はやっぱり制限がある、人間であるのだなという感慨の点と、しかし心配することはないな、という強さの点にも通じる良さがある。運を逃さずしっかりものにするところも魅力的*6

手法

 様々な知識を総動員してことにあたるので、使う手法が本当に多彩で、これが読んでいてとても面白い。面白い例を挙げると、銃と別にバレルを使って弾丸を中継することで予測不可能な地点から射撃*7、埃がたまった工場に風を入れて粉塵爆発*8、標的の人物を好物の満漢全席でおびき出す*9、など……。毎回なるほどすごいと感心しながら読んでいる。

ありえる

 どのお話も、現実にありえる範囲で書かれていて(多分)、少なくとも科学的に納得できるくらいにはなっているはず。細かく計算したら無理とかはあるのかもしれないけど、素人目には特に突飛な現象が起きたりはしていない。読んでいて面白いのは、そんなの万にひとつもありえないじゃないかと一蹴したりせずに済んでいるからだと思う。
 人間であるに通じるけど、ゴルゴ13の身体能力は、驚異的ではあるものの人間を超えない。空は飛べないし、撃たれたら出血するし痛みもある*10。重い銃を担いで階段を急いで登れば激しく息が切れ*11、極寒の地ではペンギンを集めて耐え忍ぶ必要がある*12。病気にもかかる*13。本当に???と思うことは色々あるものの、どれにも魔法と感じるような事柄は登場せず、知識や体力などでなんとかやっていっているのだな、と読める。

職人/達人

 作中でゴルゴ13の職業について言及されるときは、大抵は狙撃手(スナイパー)となっていて、実際射撃をメインの仕事としている。もちろん(?)暗殺の依頼が多いものの、人工衛星を破壊してほしい*14とか、舞台上の演奏中のバイオリンの弦を切ってほしい*15とか、ダイヤを砕いてほしい*16とか、色々な依頼がある。それらに全力で忠実に応えていく様やその技術の高さ、気に入らない(ルールに合わない?)依頼には全く応えない様などに、職人のようなものを感じる(そう思わせる描写やお話もたまにある)。僕は元来職人が好きで(憧れみたいな気持ちがある)、テレビや落語などでも登場すると嬉しくなるので、同じようにゴルゴ13も好きなのだと思う。
 ゴルゴ13以外にも職人や達人というような人がよく登場する。狙撃手*17はもちろん、銃づくりに関する(含むカスタムやストックづくりなど)職人*18、暗闇で射る弓の達人*19、原始的な治癒法を伝承している祈祷師*20修験道の師*21、中華料理の達人*22など様々なものの、みんな自分の信じるものを信じていて、かつゴルゴ13と理解しあうものがあるような描写がされる。これも好きな理由のひとつ。
 ゴルゴ13からこれらの人々に何かを依頼することもあって、自身ではできないことなのだな、と思うと、やはり万能ではない、人間なのだ、と実感できるポイントでもある。「これをできるのは世界でお前しかいない」というような台詞が、(おそらく)世辞ではなく本当に世界中の職人を知っている上で発せられる*23のをみなさまにも見て欲しすぎる。

歴史の一解釈

 現実に基づいた世界で出来事が起こっていくので、戦争や世界恐慌、暗号化技術の発展など、史実で起きていることを描くお話も多い。そこにゴルゴ13が絡むので、架空のお話であるということはわかっているとしても、もし似たようなことが(ひとつくらい)実際に起きていたら面白いな、と空想する楽しみ方がある(中学の歴史の授業で見た「時空警察」というドラマに近い)。現実に起きていることでもしゴルゴ13が居たら誰の依頼で何をしているかを考える楽しみもあるという意味でもある。これらは陰謀論に近いので、フィクションであることは重々承知するようにしているけど、戦時中に起きた出来事、権力の及び方、宗教と経済、国同士の思惑など、少なくとも僕の想像できる範囲の外のお話を読むことができてよい(どれくらい理解できているかは別……)。

よくわからない

 「すべてが不明」とある通り、ゴルゴ13は作中ではほとんど誰にも何も知られずに活動していることになっていて、読者から見ても(情報はとても増えているものの)詳細なところはわからないままになっている。何を考えているか、なぜそうしたのか、などが本人から語られることは少なく(考えていることの吹き出しでも三点リーダが入っているだけのことが多々ある*24 )。一応、他の人物が狂言回し的にかなり説明をしてくれるタイプの漫画なので、なるほど〜とはなる。本当にそうなのかは不明。
 個人的には、昔は全部知りたいという気持ちが強かったものの、今はわからないままなのも面白いなと思えるようになってきた。予想をいくつかしてみて、なんとなく納得したり、納得できなかったりしながら読んでいる。

むすび

 色々書いてみたけど、言葉にするとなんか違うような気もしてきて難しい。すっかり抜けていて書いてないこともありそう。とはいえ前々から一回言葉にしてみたいと思ってはいたので、ひとまず書き起こせるのはこのくらいか……?というくらいには納得できたのでよかった。
 さいとう・たかを先生は亡くなってしまい非常に残念ですが、それでも連載が続くことが本当に嬉しく、今後も心から楽しみです。

………だが、物語は続く。

訃報:さいとう・たかを氏 ご逝去 | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館

*1:お話の中でもそのように扱われることがしょっちゅう

*2:詳しいことは不明

*3:破局点(カタストロフィ・ポイント)」(26巻)、「1万キロの狙撃」(191巻)など

*4:黄金の犬」(130巻)、「寡黙なパートナー」(197巻) 、他にもあるかも

*5:「ロックフォードの野望 謀略の死角」(66巻)。これは「ロックフォードの野望」(63巻)の続きなので、順に見ると面白い

*6:個人的には「破局点(カタストロフィ・ポイント)」(26巻)がかなり運任せで解決の糸口を掴んでいて面白いと思う

*7:「円い村」(95巻)。どうでもいいけど車がランチアデルタな気がする

*8:「FIRE!」(156巻)

*9:「白団回顧録」(202巻)

*10:「1万キロの狙撃」(191巻)では、足が折れつつ腹にパイプが突き刺さるという事態になりかなり苦しむ

*11:「宴の終焉」(150巻)。デイブの職人さもキャラもよいというのは有名だけど、この回はそれがかなり出ているのでおすすめ

*12:「極寒の大地」(156巻)

*13:「病原体・レベル4」(114巻)、「キャノピーからの使者」(188巻)、「亡者と死臭の大地」(200巻)など

*14:宇宙に行くお話は「軌道上狙撃」(39巻)、「一射一生」(155巻)、「流星雨の彼方で」(191巻) (他にもあるかも)。宇宙空間での狙撃、本当に???度が高いのでおすすめ

*15:「G線上の狙撃」(75巻)

*16:「死闘ダイヤ・カット・ダイヤ」(61巻)。これは登場する職人が本当に最高なのでおすすめ。ギネス記念で golgo13.com で無料で読めるので今すぐ読んでほしい → ゴルゴ13|死闘ダイヤ・カット・ダイヤ

*17:「もうひとりのプロフェッショナル」(193巻)など

*18:「AT PIN-HOLE!」(7巻)、「傑作・アサルトライフル」(100巻)、「STOCK」(195巻)など

*19:「一射一生」(155巻)。宇宙だし弓だし訳がわからないけど、異常な達人芸が見られておすすめ

*20:「キャノピーからの使者」(188巻)、「亡者と死臭の大地」(200巻) など

*21:「震える修験者」(197巻)

*22:「白団回顧録」(202巻)

*23:今さっと思い出せるのは「宴の終焉」(150巻)、「夏の老人」(177巻)

*24:これは他の登場人物でもそうなので、作風としてそういうものでもある